開院113年の歴史のある歯医者 常滑の久野歯科医院です
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6校会学術講演会に出席

	東京歯科大学愛知県同窓会の関係の学術講演会に参加しました
	演題:口腔粘膜はわれわれの専門領域 迷っていませんか、この色と形
	講師:柴原孝彦先生(東京歯科大学名誉教授)
旧6と6校会
	終戦の時に存在していた旧制歯科医学専門学校のうち、廃校に成らずに大学に昇格した6大学のことを「旧6」といいます。
	「旧6」は日本歯科大学、日大歯学部、東京医科歯科大学、大阪歯科大学、九州歯科大学そして東京歯科大学の6歯科大学のことを指します
	6校会と言うのは10数年前より愛知県下の旧6の歯科大学の同窓会の会長が親睦と交流を深めるためにつくられたものであると聞いています。
	その6校会で学術講演会が開催されました
講師について
	講師の柴原孝彦先生は東京歯科大学の口腔外科学第1講座の主任教授を退官され、名誉教授になられ現在、東京歯科大学千葉歯科医療センターの客員教授として活躍されています。
	柴原先生は私が東京歯科大学補綴第2講座の助手をしていた時に中川寛一先生と共に沖縄県、北大東島の厚生省からの無歯科医診療に参加したグループのお一人です。
	とてもお酒の強い先生で当時、島民の方に歓迎に毎日のように泡盛を振舞っていただきましたが、泡盛の独特な香りに慣れてしまい、島を離れる頃には泡盛の水割りを水のように飲まれていたのを思い出します。
	時が経ち、柴原孝彦先生は東京歯科大学口腔外科の主任教授となり、中川寛一先生は歯内療法の主任教授から根管治療の専門医となり、私は人口6万人足らずの常滑市の町の歯医者のひとりとなりました。
最初に
	柴原先生は講演の冒頭に新型コロナウイルス感染症の影響でWHOの当初の歯科の受診抑制の勧告が間違いであったため、誤嚥性肺炎が増加し、歯科疾患の重症化が起こった。
	歯科疾患の重症化にはむし歯や歯周病の悪化に加えて、口腔がんの増加も関係している。
	口腔がんの増加はお口の健診ができなくなったため、口腔がんの発見が遅れ、口腔がんの重篤化が起こったことを実例を提示してお話くださいました
日本の口腔がん事情
	日本の口腔がんの特徴は
	・女性患者の増加
	女性は男性に比べて寿命が長く、高齢になるとともに初診の口腔がん患者が増加しています
	・若年者の増加、
	初診の口腔がんの25年間の40歳以下の年次推移で増加が認められます
	・罹患者数と死亡者数の増加
	致死率は40%、アメリカは19%となっているようです
	また、柴原先生は口腔がん発症の誘発因子の新しい見解として狭窄歯列や舌側転位などの歯列の不正、口呼吸からの舌の機能低下、低位舌、口腔乾燥などを上げて説明していただきました。
口腔粘膜の診査時のチェックポイント

	口腔粘膜疾患のチェックポイントは4つあり
	ポイント1
	色調
	色を判断の参考にします
	色の種類は4種類 黒、黄色、赤、白で注意を要するのは赤と白です。
	黒には悪性黒色腫がありますが、非常にまれなものです
	黄色は脂肪腫などの脂肪関連の疾患があります。
	沈着する臓器にもよりますが口腔内のものでは良性のものがほとんどです
	赤色なのは粘膜の中の血管が拡張し透けて見えるために赤くなる
	白色は粘膜の表面が角化して白くなるなど解説されました
	ポイント2
	形
	形は膨らんでいるもの(外向き)、潰瘍を形成して陥没しているもの(内向き)など多様ですが粘膜との境界が不明瞭です
	ポイント3
	硬さ
	境界の周辺の硬さ、硬結により判断ができます。指を使い、はさむようにして注意深く触ります(双指診)。
	診断のキーポイントになります
	ポイント4
	機能
	口腔がんはがんが大きくなりだすと急速にすすみます。知覚神経や運動神経の麻痺など神経障害が起こってきます
口内炎の様々な原因
	口腔がんは治りの悪い口内炎のように発症することがあります
	口内炎の局所的、全身的要因には
	・よく口の中を咬む
	・いればの不適合
	・疲れや栄養不足
	・ウイルス感染
	・喫煙
	・多剤併用
	などがありますが、日本は人口当たりの薬剤消費量が世界1です
	抗リウマチ薬、狭心症治療薬、骨粗相症のビスフォスフォネート剤には注意が必要です。
口腔潜在的悪性疾患
	前がん病変と前がん状態の大部分を含めて、現在では口腔潜在悪性疾患と呼ぶようになりました
	具体的には紅板症、紅白板症、白板症、口腔粘膜下線維種症、慢性カンジダ症、口腔扁平苔癬があげられます。
	慢性カンジダ症と扁平苔癬が、がん化の可能性を示しているのが興味深いです
	がん化するのには10年以上かかります。
	開業している歯科医は口腔潜在悪性疾患を早期に発見することが口腔がんから命を守るための重要な役割りとなります
DX化の可能性
	DXとはデジタルトランスフォーメーションのことで進化したデジタル技術を浸透させ人々の生活をよいものに変革させることのようです。
	口腔粘膜疾患の診察とその信頼度を高くするために光学的な診断機器が登場してきました
	蛍光観察の仕組みを説明していただきました
	今までの問診、視診、触診に加えて侵襲のない蛍光観察が臨床の口腔がんの診断の幅を広げることでしょう
	デジタルスキャナーと同様に口腔がんの検査をして保険診療が認められれば、急速に普及するでしょう。
口腔がん検診は有効か?

	口腔がん検診の目的には
	・口腔がんによる死亡率や罹患率を低下させること
	・早期発見、早期治療に導くこと
	治療効果があります
	・QOLの向上
	食べる機能の維持と顔貌、外観の維持
	・医療費の削減
	進行がんを減少させる結果、治療にかかる費用をすくなくできます
	・口腔がん啓発
	口腔がんというものを世間一般に知ってもらう認知度の向上が期待できます
	口腔がん検診を広める課題には一般的に
	・ほかの検診事業と同じように地域性や医療環境に考慮が必要
	・口腔がんの早期発見の啓発
	・基幹病院や大学病院の口腔外科との連携と協力
	・行政の検診事業への予算と理解
	などがあることをお話いただきました
	また柴原先生は常滑市の口腔がん検診を知り、参考にしていると話されていました。
	常滑市歯科医師会の歯科医師は「60歳歯の健診と相談」という集団検診のときより愛知学院大学歯学部の口腔外科第2講座の協力をいただき、毎年口腔粘膜疾患の講習を受け、健診方法の指導を受けてまいりました。
	そこから発展した現在の歯科総合健診には口腔がんの健診項目も入っています
	最後に、継続して行なわれる定期健診の重要性を解説していただきました
	口腔粘膜疾患のみでなく舌の位置から口腔機能発達不全、オーラルフレイルにいたるまでを関連づけられた幅の広いお話をしていただきました。
	柴原先生の熱い心が伝わる素晴らしい、第1回6校会の学術講演会に相応しい講演会でした













